RPCD

かみやす矯正歯科のRPCDエコサイクル&SDGs

かみやす矯正歯科のRPCDエコサイクル&SDGs

歯科医院でのRPCDエコサイクルって?

先生、そもそもRPCDって何ですか??

「R」は
RESEARCH
「P」
PLAN and CHECK
「C」
Consultation with Patient
「D」
Do
です。

マーケティングで使うPDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)ですが、矯正歯科流に一部アレンジしました。
一個一個説明していきますね。

「R」は
RESEARCH

「P」
PLAN and CHECK

「C」は
Consultation with Patient

「D」は
DO
Treatment w/Wire and/or Aligner(ワイヤーやアライナーでの治療)

「C」は本来「チェック」なんですが、矯正歯科では「M」(monitoring:モニタリング)として置き換えます。(後述します)

また、歯科医院ならではの「C」(Consultation with Patient:患者さんと一緒に診断結果を共有する)があるので、「RPCD」としました。

歯の矯正ならではの「C」が、コンサルテーション ウイズ ペイシャント・・・まるで英語のテストのようですね(笑)。

歯周病の勉強のために留学していたので、お陰様で英語は得意です!

「R」まずリサーチからいきましょうか。

RPCDエコサイクルの「R」

2D X-ray(レントゲン)

CT(Computed Tomography)

口腔内スキャン(光学印象)

Interview(対診:たいしん)

Charting(診療記録、カルテ)

3D-Printer for Model(3Dプリンタでの模型作り)

リサーチは、レントゲン撮ったりCT撮ったりスキャン撮ったりすることです。
2021年11月に新しいCTも導入しましたので、さらに詳細な診査が出来ます。

新しいCT

それから、対診(たいしん:インタビュー)ですよね。
患者さんが何を求めているのか、何を治したいのか?を聞いて、共有します。
また「チャーティング(Charting)」と言って、顔色とか喋り方とか口が開いていないかとか、口呼吸しているか鼻で息しているかとか、目の球が上に向いているとか、よく患者さんを診ます。大人の場合には歯ぐきの状態も調べます。

顔色ですか?目の位置ですか?歯医者さんなのに??

はい。口が開いている人は扁桃腺が腫れていたり、イビキをかくだったりとか。
そういうようなことを診ていきます。

今度は、3Dスキャナー「iTero」で口の中をスキャンして、立体のデジタルデータにします。
そのデータを「3Dプリンター」を使って合成樹脂(プラスチック)製の模型を作ります。

合成樹脂(プラスチック)製の模型
デジタルデータで自分の口の中のデータを取って3Dプリンタで再現・・・見えすぎちゃって困りますね(笑)。時代が進んでいてついていくのが精一杯です。これってどうやって作るんですか?時間はどれくらいかかるのですか?

3Dプリンタで40分くらいですね。
5年程前に学会展示で見たときには、プリンタ―時間が一晩(7~8時間)かかったんですよ。

プリンタ―

トレーに液体の樹脂を入れて。積み重ねるんですよ。
50ミクロン100ミクロン175ミクロンと層の高さが選べ、細かいほうが精巧な模型が出来てきます。
これは100ミクロン単位で作りました。(1ミリ=1000ミクロン)
出来たらここに張り付いています。

精巧な模型

40分で出来るのでその日のうちにリテーナー(保定装置:矯正した歯が戻らないようにするもの)が作れちゃうんです。
(新しい写真 “ミニバイオスター”です。樹脂模型から保定装置やマウスピースを製作する機械で2021/4に導入しました)

ミニバイオスター

バイオスターで作成した保定装置

バイオスターで作成した保定装置

これはドイツ製なんですけれど、3Dプリンタはアメリカ製です。
この模型上で、熱を掛けてプシューってやると出来るんです。

すごい、その日の悩みその日のうちに!(某洗剤のコマーシャルのよう)

保定装置(ほていそうち:矯正後の歯並びをキープするために付ける装置)や、「私、マウスピース入れて気持ち悪くならないかしら?」って心配な方にお試ししてただくためのマウスピースを作ることが出来ます。
今までほとんどの方がマウスピースを試して、大丈夫なことを実感して矯正を始めています。

安い買い物じゃないので、お試ししてからスタートできるのはうれしいですね。先生、矯正装置の調整、楽しいのでは?

はい、そういうの大好き!(詳しくはインタビューご覧ください)
保定装置は、従来のワイヤーのものもあります。
どちらがいいか?は、人によります。

先生、もしかしてワイヤーの保定装置も自分で作るんですか?

作ります。
今までは石こう模型上で保定装置を作っていて、「石こう分離材」という昔からあるやつを使って最後パコッと簡単に外れるんです。
しかし、3Dプリンタで作った合成樹脂の歯列模型上でレジンにより保定装置を作成すると、外れなくなっちゃったんですよ。(汗)
なので、いろいろ分離剤の種類を試してみたんです、東急ハンズで買ってきて。(笑)
3Dプリンタの会社の人もノウハウを教えてくれたりして、やっときれいに外せる分離剤を発見しました。
このプロセスだと、石こうと印象材が不要になります。

石こうと印象材?

はい。
歯型を採るのに、従来は粘土を口の中に入れて何分かおいてましたよね。
その粘土の事を「印象材」といいます。
その印象材に石こうを流し込んで、歯型の模型を作って、初めて矯正の装置が作れるんです。
2ステップあって、且つそれは結構なゴミの量になっちゃうんです。
でもそれが3Dスキャナーで歯型を採るようになったことで、ダイレクトに模型が作れます。
そうすると、石こうと印象材のゴミも出ないし、オエっともならない。
また、印象剤や石こうが硬化する時の熱膨張もないので、正確です。

印象材
なるほど!あの金具のトレーを見ただけでオエってなります。(笑)

そうです、何よりも患者さんが嫌がらない、オエっとならない。

印象材のゴミが出ない、石膏のゴミも出ない、オエっとならない、3ないですね!

最近よく聞くSDGsの12「つくる責任つかう責任」(ゴミを出さない)というに近いのかな?
できたら液体の合成樹脂を溶かしてさらに利用出来たらいいなとも思っています。

RPCDエコサイクルの「P」

今度は
「P」
PLAN and CHECK

Analysis(アナライシス:分析)

Planning(プランニング:治療計画)

3D-Printer for Appliances(装置)

先ほどの「リサーチ」の部分の復習です。
スキャンして模型を作りますよね、レントゲンをとりましたよね。
そうしたら今度は、「セファロ分析」というのをするんですよ。

セファロって、よく矯正のホームページに出てきます。でもいまいちなんだかわからない。あ、これですか?何ですか?この暗号みたいのは?
セファロ分析

「ナジオン」とか「セラ」とか「ポリオン」とか「バジオン」とか部位が決まってます。
セファロで基本的に何を見るかというと

  • 1.頭に対する上アゴ、下アゴの位置
  • 2.上アゴ、下アゴの位置関係、調和度
  • 3.上下の前歯の角度(歯軸)

をみます。
「この人の前歯の角度はどうなのか?」とか、「上アゴ下アゴの位置が頭に対して前の方にあるのか後ろの方があるのか?」とか、「上アゴ下アゴのバランスが取れているのか?」
とか、そういうのをみるのがアナライシス(Analysis)というんです。

プリンタのモデルとアナライシス(分析)、インタビューを組み合わせてプランニング(治療計画)を立てるんですよ。

なるほど!!

これが「ポリゴン表」です。
ここ、とても大切です!
これ、矯正歯科を専門に行う歯科医師は絶対にやっています!!!
こういうのをやってない=分析、診断のないで治療計画のない見た目だけの「じゃ、デコボコだから、それを治しましょう」だけでやると問題が起きる可能性があります。

ポリゴン表
これぞ矯正専門の先生たる所以ですね。歯科大学の授業ではやらないんですか?

概要のみ習ったと思います。
ちゃんと時間をかけて教育を受けていないと出来ないですよね。
大学の授業ではチョットしかやらないので全然わからない、矯正科に入らないと分からない。

歯の矯正で「セファロ」とよく聞きますが着地はココなんですね。

はい、今のところ2Dですが、だんだん3DになってくるとCT(立体的な構造を知る)とアナライシスと組み合わせて出来てくるかもしれないですね。

輪切りですよね、これMRIですか?
CT画像

MRIは舌や顎関節円板などの「軟組織」を撮るんです。
CTは「硬組織」を撮るんです。

そうなんですね。いまさら聞けない系でした。(笑)
CT画像

この人はこの位置関係が2Dじゃわからないから、3Dで骨の中の犬歯の位置を詳しく調べます。
犬歯を無理に出したら隣の歯の根っ子を痛めちゃうから犬歯が下りてくるのをもうちょっと待ちましょうね。

説得力ハンパないですね!この埋まっている犬歯を動かしたらどうなるんです?

骨内に埋まっている犬歯は動かせませんから、犬歯が生えやすくするために、
最初にアゴを拡げて、スペースを広げておく。
それを診るために新しいCTを入れるんです、これでリサーチ(調査)する道具は揃います。

無理に犬歯の隣の歯を動かすと、隣の歯の根っこって溶けちゃうんですね・・・もしかして永久歯が生えてくるときに乳歯の根っこが溶けるのはその仕組みですか?

はい正解です!(笑)
プランニング・・・治療計画を立てて、場合によっては模型や装置を作ります。
「こういう風に治療計画をプランニングしましたよ」と患者さんに説明して「これでいいですか?」と体系立ててやるのが・・・。

「コンサルテーション ウイズ ペイシャント(患者)」ですね!

RPCDエコサイクルの「C」(Consultation with Patient)

そうです!
「ココをやった時はちょっと痛いかもしれません」とか「あなたはちょっと時間がかかるタイプかもしれません」とか「もしかして難しいタイプだからミニスクリュー(動きを制御するために、歯グキに小さなインプラントをする:直径1~2㎜、長さ6~10㎜。ピアスのような感覚と思っていただけると分かりやすいです)をやらなきゃいけないかもしれませんね」とか、セファロで確認するんです。

特に下アゴの形を診るんです、華奢だとか顔が長いタイプだとかそういう人は難しいんです。
そのパターンは咀嚼筋(そしゃくきん)、つまり噛む筋肉が弱いんですよ。

セファロ 下あご
顔が長いと咀嚼筋が弱い?

咀嚼筋(そしゃくきん)という筋肉がある。
弱い人・・口開いていたり、鼻炎だったり、扁桃腺が腫れていたり・・・あんまり噛んでないから弱いんです。

アゴの筋肉がムキムキマッチョじゃないってことですね?

いつも噛んでないから、奥歯が変な風に動いちゃう。
この歯(上の奥歯)が下に降りてきちゃうと、下がさがっちゃう。
この歯が下に降りると、こうなります。
そうすると、下アゴ自体が、こっちに後下方(こうかほう)に動きます。

こうかほう?

後ろの下方に回転しちゃうんです、時計回りに。
出っ歯さんだったりするともっと悪くなっちゃうんです。

そりゃ大変だ。

そうすると「なんか噛めなくなっちゃった」となりますから、我々は分かっていれば奥歯が後下方に下あごが回転しないように、ここにミニインプラント(下記写真の×部分)とかを入れて、動かないようにする。

ミニインプラント
いろんな技があるんですね・・。(複雑な話なので、分からない方はぜひ先生に聞いてください)

アゴが下に行かないように、ミニインプラントを使ってぶら下げます。
そして、矯正の方法を針金かマウスピースか、もしくは両方かを決めます、ココが重要なんです。
ワイヤーはアナログなので、やってみてどういう風に動くか正確には分からないんですよ。

シミュレーションが出来ない?

はい、でもマウスピース型矯正装置(インビサライン)(※)は最初からシミュレーションが出来る。
たとえば、42段階のうちの今は20ステージ、これくらい歯が動いていますよね、と実際に患者さんの歯と照らし合わせて予定通り歯が動いているかどうか分かるんですよ。

インビザライン

(※:マウスピース型カスタムメイド矯正装置。
完成物薬機法対象外の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済措置の対象外になることがあります)

噛み合わせもシミュレーション通りかどうか?マウスピース型矯正装置(インビサライン)(※)の場合は確認できる。
この図の中にいれると「モニタリング」ですかね。

RPCDエコサイクルの図

でも針金の場合はわからない。
だけど、矯正医を20年以上やってリサーチのデータが蓄積されてくるので次の患者さんの治療に反映される。
これが当院独自の「RPCDエコサイクル」ってことですね。
マーケティングでいうRPCDの「チェック」は「モニタリング」になるってことですね。

ノウハウが積み重なるいいスパイラルですね!このように「治療のプロセス」を体系化している先生ってなかなかいないですよね。

我々の当たり前は、患者さんの当たり前ではないということを患者さんとお話ししていると気づかされます。
なので、その知見を共有することが大事です。
しかもこのプロセスが全部デジタルなんですね。

全部デジタル?

はい、新しいCTが来ると院内ならどこでも、すべてのデータが見られます。

「RPCD」「デジタル化」「SDGs」と「3本の柱」があるってことですね?タイトルをつけるなら・・・「エコネットワーク」ですね!

「かみやす矯正歯科が考えるRPCD的矯正治療」ですね。
それがつまり、SDGsにもなっていた!ということでした。

SDGs画像
「3」の「みんなにちゃんとした医療」の社会貢献にもつながりますよね。世のお母さんたちに知ってほしい!

ただ歯並びを治すのではなくて、口呼吸の問題とかイビキの問題とかは、子供の健やかな成長に関わってくる・・・子供たちには健やかに成長してもらいたい!
(歯並びを)キレイにするだけは嫌なんです。

矯正の先生っぽくないですね。(笑)

「鼻呼吸をしやすくなりました」とか「よく寝られるようになりました」とか「学業良くなりました」とか「体がデッカくなりました」とか患者さんに言ってもらえるのが快感なんです。(笑)
そうなることを、お父さんお母さんと子供たちに知ってほしいんです!

先生のブログを拝見していて、口呼吸で歯周病が引き起こされるというのを知りました。

学校歯科健診におけるGo(軽度の歯肉炎)についてー
子供たちの「食べる喋る呼吸する」、つまり「生きる力を育む学校での歯・口の健康づくり」というのがあるんですが。

学校教育と「歯・口の健康づくり」
文部科学省「学校歯科保健参考資料「生きる力」をはぐくむ学校での歯・口の健康づくり」

上記の話をしている明海大学の学長さんに賛同しています。
歯周病は生活習慣病なんです。

え?そうなんですか?

子供たちにとって歯肉の病気は一種の生活習慣と深く関連しています。
心臓病とか血管障害というのは子供たちには目に見えないので分かりづらいし、もちろん子供はなりづらいですよね。
歯の事は、鏡を見れば割と分かりやすい・・・磨き残しがあるとか、発音が変だとか。
生活習慣病が「可視化・見える化」できるので、生活習慣病の学習のとっかかりを歯科からやりましょうということです。

確かに血管の中は見えないけど、歯は鏡を見ればすぐ見れますよね。

東京都学校歯科の学術委員になったので、授業の本を作っているところなんですよ。
学校の子供たちにこういう事も教えて行きたいと思っています。

そこまで先生考えてくださっているんですね。(涙)

歯だけじゃなくて、身体のこと、子供のこれからの人生の事、考えてます。
小学生のお母さんに矯正の方法をワイヤーかマウスピース型矯正装置(インビサライン)かっていうと、絶対マウスピース型矯正装置(インビサライン)っていうんです。
ほとんど出来ますけど、マウスピース型矯正装置(インビサライン)はあくまでも1つの道具なんです。
大人はマウスピース型矯正装置(インビサライン)で出来るようになるまで、横だけ針金にするなどハイブリッドでやります。

次回、下記の部分にさらに迫ります!

「D」は
DO
Treatment w/Wire and/or Aligner(ワイヤーやアライナーでの治療)

~~~~~インタビュー後記~~~~~
相談しに行った際に「何でも質問してください」と言われても、おいそれとは質問できません。
でも、かみやす先生は質問すると「ハイ待ってました」とばかりに、意気揚々と話をしてくれます。
知識を共有することは楽しいことです。
その楽しさを矯正から派生して、人の体の仕組みにまでに及んでしまうところがかみやす先生のすごいところです。
以前インタビューの際「ゴルジ体がね」と目をキラキラ輝かせながらお話ししていたことを思い出しました。
また、矯正器具を手作りする話をするときのキラキラな瞳も忘れられません。
研究熱心で、新しい矯正方法やギアを試してトライ&エラーで進化することが楽しくてしょうがない感じがビンビン伝わってきてコチラまで楽しくなりました。
質問すると、なるべくわかりやすく説明しよう、そして興味を持ってもらえるように面白く伝えようとしてくれている雰囲気も伝わりました。

そして先生にとって当たり前なことも私たち患者にとって当たり前じゃないということが分かりました。
先生の頭の中をアウトプットしたことに意味があります。

教育面からも社会貢献をされてる先生で、好感が持てました。
SDGsは子供たちも学校で学習しています。
プラスチック、環境保護、ゴミが減るなど、出来ることからやってく姿勢も覗い知れました。