【小児矯正】お子さんは口を開いていませんか?
お子さんは口を開いていませんか?
「どうして口を開いていちゃいけないの?」
「どうして口で息をするのがダメなの?」
大方の方はそう思っています。
でも、知れば知るほど、口呼吸のどこがいけないのか?鼻で呼吸するとこんなソンがあるんだ!ということに気がづきます。
まさに知らなき損!な話です。
どうして鼻呼吸がいいのか、一緒に紐解いていきましょう。
その1 鼻呼吸と口呼吸
最近、普段から、あるいは寝ている間に口を開けている子供が増えています。
「口をいつも開けている」=「口で呼吸をしている」ということです。
これは子供達の身体の成長に影響を及ぼしてしまうのです。
まず、口が開いているのはどうしてよくないのか?
そしてその解決方法や歯並びにその影響が出ている場合での治療について考えましょう。
呼吸には「2つの種類」あります
鼻での呼吸を鼻呼吸、口での呼吸を口呼吸、呼吸にはこの二つの種類があります。
正常な呼吸は、口を閉じた状態でする鼻呼吸です。
寝ている時も、鼻で呼吸をしています。
一方、口呼吸は、口を開ける癖や鼻が詰まっていたり、あるいは激しい運動中にも口を開いているときに発生します。
では、どうして鼻で呼吸するのが正常なのでしょうか?
それは、鼻がすばらしい機能を持っているからです。
鼻呼吸の役割
1.空気のフィルターの役目
鼻毛や鼻孔(びくう)内の粘膜が、吸った空気の細かい異物をブロックし、不要物を鼻水として外に出します。
約50~80%も遮断しています。
自前の空気清浄機といったところです。
2.温度・湿度を管理してくれる
外からの冷たく乾燥した空気を、鼻の中の毛細血管が、空気が入ってくるや否や温度や湿度を身体と同じくらいに調整するのです!
この機能があるから、シベリアなど寒冷地でも人は生きていけるのです。
冷たい空気から肺を守り、安全に呼吸ができるのです。
3.脳下垂体の下を空気が通るので、脳を冷やします
これはなかなか思いもつかないことですが、鼻から入った空気がノドに辿り着くまで、鼻の中を通るときに脳を冷却するのです。
下記の画像を見ると分かりますが、鼻孔(びくう)のすぐ上には脳があります。
脳が活発に活動すると、血液が集まり熱を持ちます。
ヒートアップした脳をクールダウンする働きも鼻呼吸にはあるのです。
ちなみに、脳下垂体は全身のホルモン系を支配する場所です。
鼻は、まさに「一台四役の超高性能フィルター&エアコン」なのです。
その2 口呼吸の原因
では、どうして口呼吸になってしまうのでしょうか?
もともと、鼻で呼吸をするよりも、口で呼吸をする方が抵抗がないので、楽です。
鼻呼吸の特徴は、ゆっくりとした深い呼吸法です。
口呼吸の特徴は、浅い速い呼吸がしやすく、特に運動中は空気が身体の中にたくさん入れたいので、無意識に口を開けて口呼吸をします。
しかし、一日中運動をしているわけではありませんね。
口呼吸の原因は人それぞれ異なり、確定的な理由はわかっていません。
諸説を挙げると・・
1.母乳ではなく、哺乳瓶を使っていた?
母親の乳首に比べ、哺乳瓶の乳首は一般的に柔らかく、ベロの少しの力でミルクが出てきます。
2.離乳食の時期が早過ぎる?
お乳を飲んでいる時期の赤ちゃんは鼻呼吸です。
そうしないと、お乳を飲んでいるときに息ができません。
しかし、口の周りの筋肉が十分に発育する前に離乳食に切り替えると、口呼吸に変化していくことがあり、それが癖になってしまう場合があります。
3.アレルギー疾患?
近年、アレルギー性鼻炎、喘息、扁桃腺炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー体質の子供が増えています。
特に都会では、半分以上の子供に何らかのアレルギー症状があるようです。
鼻炎によって鼻が詰まると、鼻で呼吸ができなくなります。
扁桃腺が腫れると、ノドの上部の空気の通り道が狭くなり、口を開いて呼吸をするようになります。
口を開いて呼吸をしていると、ベロの位置が変わります。
その3 ベロの位置はとても大切!
ベロの位置って、どこにあるかを気にしたことありますか?
実は、ベロの位置と、呼吸は、とても関係が深いのです。
ではここで質問です。
あなたのベロの先はいつもお口の中のどこにありますか?
1.上の前歯の後ろ、上アゴに付いている。
2.上下の歯の間にある。
3.下の歯の後ろに付いている。
4.わからない。
正常なベロの位置は1.です。
聞かれて初めて、ベロの位置を気にしたという人がとても多いのでは?
通常、無意識のうちにベロの先やベロの背中前方部は、上の歯裏側の「口蓋(こうがい)」という場所に押し付けている感じなのです。
ベロが上アゴに位置していれば、口は必ず閉じて鼻呼吸が自然にできています。
鼻呼吸が可能な条件
*口を閉じていること
*ベロが口蓋に付いていること(口の中の上アゴ部分)。
では、2,3,4の場合は、いったいどうなんでしょう?
何らかの原因により、ベロが下アゴの方に位置していることが考えられます。
多くみられるのが、カゼや鼻炎で鼻が詰まることによって、鼻で呼吸がしにくくなると替わりに口を開けて呼吸をするようになります。
また、アデノイド(咽頭扁桃)や口蓋扁桃が大きくなると、空気の通り道(気道)が狭くなり、鼻からの呼吸では酸素が足りなくなります。
そうすると、沢山の空気を取り込もうするため、無意識に口を開けて呼吸をします。
そのような状態が続くと、鼻炎や扁桃腺の腫れが治ってもベロを下の方に下げたまま口で呼吸することが習慣化してしまいます。
口で呼吸する場合、必ずベロは下の方にあります。
図に「正常な舌の位置」と「低い位置の舌」という表記がありますが、左側が望ましいえのです。
その4 健康への影響
「口をいつも開いている」ということは、自ら外からのバイキンが口に入りやすい状況を作っているともいえます。
口呼吸では、鼻呼吸のようにフィルター作用や温度、湿度調節機能がありません。
口呼吸をすることは、ノドのリンパ(ノドのリンパはむき出しなのです)や肺に、バイキンや乾燥した冷たい空気が送り込こんでいるようなものです。
ちょっと難しい話ですが、口の奥やノドには、リンパの集合体(ワルダイエル扁桃リンパ輪)があり、これは生体防御システムの役目を果たしています。
リンパは、外からの異物などを処理する場所ですが、口を開いていることにより、ノドの部位の体温が低くなり、リンパの機能が低下します。
その結果、リンパ輪はバイキン繁殖の温床となり、いろいろな病気の原因になります。
口呼吸と関連する主な疾患
【A】アレルギー性疾患:アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息、扁桃腺炎
近年、アレルギー疾患を持つ子供が増えています。
アレルギーにより、鼻が詰まったり、ノドが腫れ、またその症状を繰り返すことにより、口を開ける癖が付いてしまいます。
【B】カゼ、インフルエンザ
日常的に口を開いていると唇が乾き、バイキンが身体に侵入しやすい状態といえます。
【C】イビキ、睡眠障害
扁桃腺の腫れや口を開けている習慣により、ベロの位置が下方、あるいは後方へ位置し、ノドの空気の通り道が狭まります。
睡眠時は、特に反射機能が弱まり、ベロが後方へ移動することにより、ますます気道が狭くなることにより「イビキ」をかきます。
さらに、気道が狭くなると、空気の通り道が一時的に閉じてしまう「睡眠時無呼吸症候群」になる場合があります。
【D】不正咬合:歯並びや咬み合せが変化、アゴの形にも影響
口をいつも開けていると、唇の周りやアゴの筋肉が発達しません。
口を開けているということは、唇の周りやアゴの筋肉の筋肉を使わなくてもいられるということです。
それにより出っ歯になったり、下アゴが小さくなったりすることに繋がり、咬み合せの問題が生じます。
【E】歯周病:子供の場合は特に歯グキの腫れ、口臭
口を開けていると、唾液があまり分泌されません。
お口の中が乾くことにより、口臭を発生します。
朝、起きたときに口臭がするのは、就寝中には唾液が出ないからです。
また、歯肉が乾燥すると毛細血管が歯グキに集まり、歯肉の腫れた状態になります。
その5 健康への影響
扁桃腺(アデノイド、口蓋扁桃)の腫れについて
生体の感染防御システムとして「リンパ組織」があります。
これは、外から侵入してきたバイキンを処理する役目があり、免疫システムがまだ整っていない幼児から思春期前の時期に活発に働きます。
その後、中学生頃になり、身体の免疫システムが整ってくるとその役目を終え、自然に小さくなっていく組織です。
リンパ組織の中でも口に関連しているのは、アデノイド(咽頭扁桃)と口蓋扁桃です。
このふたつのリンパの腫れは、歯並びやアゴの発達に深い関係があります。
とくに腫れたアデノイドにより空気の通り道である「気道」が狭くなり、鼻呼吸だけでは苦しくなり、楽な呼吸、つまり口呼吸をする癖がついてしまいます。
いつも口を開けている習慣により、下アゴの成長やベロの位置の異常が起こり、結果として歯並び、咬み合せに影響を及ぼします。
その6 口呼吸はアゴの形や歯並びに影響を与える
「通常の口呼吸」は鼻が詰まったり、激しい運動をした時に行う時のみに「一時的に行う呼吸」です。
これを習慣化してしまうと、いつも口を開けていることになり、咬む時に使う筋肉が弱くなります。
それが原因となり、口を開けていることに適応したアゴの形や歯並び、咬み合せに変化してしまうことがあります。
動物実験ではこんなものがあります。
1950年代に、サルの鼻を人工的に塞いで口呼吸をさせる実験をしました。(現在は動物愛護の観点から動物を用いたこのような実験はしにくい現状です。)
その結果、サルによって様々なアゴや咬み合せの種類に変化し、個体によって影響される歯並びはいろいろになったことがわかりました。
人での調査ではどうなのでしょうか?
口呼吸をしている人のアゴの形や咬み合せを調べた結果
60%以上の人:アゴのバランスは問題ないが、歯並びや咬み合せに問題あり
25%:出っ歯・下アゴの発達不全
10%:受け口(反対咬合)・上アゴの発達不全
という調査結果があります。
上記のように、全ての人のアゴの形が変わるというわけでありません。
しかし、多くの人の歯並び・咬み合せに影響を与えており、またその状態や程度は個人差があるようです。
その中で最も将来的に問題となるのは「出っ歯」の人です。
子供だけでなく、大人にも口呼吸が普通な人がいっぱいいます。
鼻呼吸にすることでいろいろな病気が改善するケースが見受けられます。
お子さんも、お父さんお母さんも、呼吸の仕方を意識してもらえるとうれしいです。