マウスピース法マウスピース型矯正装置※による子供(小学生)の矯正治療について

今までの矯正はハードルが高かった?!

子供(主に小学生)の歯科矯正治療は見た目だけではなく、これからの健やかな心身の成長発育にとって大切な処置のひとつです。
しかし、本人や親御さんからすると固定式ワイヤーの装置をお口の中に装着することには抵抗があるかもしれません。ワイヤーが外から見えることやむし歯になりやすい?ことが高いハードルになっているようです。

子供用マウスピース法※で矯正治療のハードルが下がった?!

従来大人の矯正治療に使われていた取り外し可能なマウスピース矯正法※が子供の治療にも用いることができるようになりました。この方法により、見た目、歯みがきやむし歯など問題が解決され、“子供の矯正に対するハードルが低くなった”といえます。

従来のワイヤーによる方法では

矯正治療が必要とされる多くの子供の場合、歯列(奥歯から前歯までのU字型のアーチ)が狭く、永久歯がきれいに生える余地が不足しています。

まだアゴの骨が柔らかい時期を利用してまず拡大装置により歯列を大きくし、その後にワイヤーにより前歯の並びをキレイに治していくように2段階に分けて行います。

固定式拡大装置 + ワイヤーによる矯正治療
1) 拡大装置による歯列の拡大 約6~10か月
2) ワイヤーによる歯の再配列 約6か月~1年

1)歯列の拡大

2)ワイヤーによる歯の移動

前歯の歯並びが改善

1.年齢:7歳9か月
2.主訴:永久歯の生える隙間がない
3.診断:上顎骨の劣成長による前歯の萌出余地不足
4.期間:2年間
5.料金:44万円+調整料1か月に一度6,600円
6.事前に知ってもらいたい事:歯磨きの重要性、装置破損の可能性
7.主なリスク、副作用に関する事項:最初の数日は痛みがある、虫歯になる可能性がある
8.抜歯部位:なし
9.治療に用いた主な装置:急速拡大装置+ワイヤー

マウスピース法※による矯正治療

歯列の拡大と歯並びを同時に治療できるという大きな利点があります。

マウスピースにより歯列拡大と歯の配列が同時に行える

1.年齢:8歳4か月
2.主訴:前歯が揃っていない
3.診断:前歯部の叢生
4.期間:1年6か月
5.料金:55万円+調整料2か月に一度3,300円
6.事前に知ってもらいたい事:取り外し可能な装置のため、1日20時間以上使用すること
7.主なリスク、副作用に関する事項:指示した時間毎日使用すること
8.抜歯部位:なし
9.治療に用いた主な装置:マウスピース矯正装置

マウスピース法治療中※の注意点

しかし、マウスピース法※が魔法の方法というわけではありません。
使用に関していくつかの注意事項があります。難しいことではありません。

1.最も大切なことはアライナーを指示する時間装着する必要があります。一日のうち食事と歯みがきの時以外は装着します。

1日24時間のうち20~22時間装着する必要があります。

2.マウスピースが変形、破折することがあります。

マウスピースの素材は弾力のあるプラスチック製です。普通に使っている限り壊れることはありません。大人のマウスピース型矯正装置(インビザライン)※治療を行っている際にはマウスピースが途中で壊れることはめったにありません。しかし、小学生の男の子の場合は少し違います。マウスピースを変形させたり、破折したりすることがあります。

その原因は
マウスピースを前歯だけで合わせてお口の中に入れ、その後、噛んで奥歯に入れる。
マウスピースを外す際、無理な力を片側から加える。アライナーは歯の動きを良くするためにアタッチメントというプラスチックの小さなボタンを歯の表面に付け、フィットするように作られているため、最初は外しにくく設計されています。本来は左右両方から外すところ、一方のみから力を加えると破折の原因になります。
マウスピースがお口の中でしっかりはまっていない場合、とくに奥歯がはまっていない状態では奥歯の部分が浮いているため、噛んで遊ぶ。
など、様々な原因があります。
しかし、女子ではそのような破損はほとんどありません。

3.親御さんの管理が必要です。

マウスピース型矯正装置(インビザライン)※治療はマウスピースをご家庭で定期的に交換していく方法です。小学生の場合には親御さんが適切に装着できているか、次のアライナー交換日はいつかなどの管理をしていただくと治療がスムーズに進行します。

4.乳歯が抜けそうな時には

小学生で行う矯正治療中は歯の交換期と重なります。乳歯が抜けても永久歯の萌出位置を想定してマウスピースは作られていますので心配いりません。しかし、乳歯がグラグラしていてもなかなか抜けず、マウスピースを装着すると痛くなることが稀にあります。その場合は連絡を頂くか、一般歯科にて乳歯を早急に抜歯することをお勧めします。

5.治療期間制限があります。

子供のマウスピース型矯正装置(インビザライン)※治療には1年6か月という治療期間の制限があります。期間の設定理由として子供の矯正治療の範囲内と定めているためです。
ご了承ください。

治療例1

主訴:上下の前歯デコボコ
年齢:7歳8か月 女子
治療方法:上下マウスピース法(Invisalign First) ※
検査費用:38,500円
基本治療費:550,000円
調整費:3,300~6,600円
通院間隔:通常2か月に1回
治療期間:1年6か月
注意事項:食事と歯磨き以外一日20~22時間の装着が必要です。協力が得られない場合は完治しないことがあります。

治療前 (例1)

治療後 (1年6か月後)(例1)

治療例2 前歯1歯の反対咬合とデコボコ

年齢:9歳3か月 男子
治療方法:上下マウスピース法(Invisalign First) ※
検査費用: 38,500円
基本費用: 550,000円
調整料: 3,300~6,600円
通院間隔: 通常2か月に1回
治療期間:1年2か月
注意事項:食事と歯磨き以外一日20~22時間の装着が必要です。協力が得られない場合には完治しないことがあります。

治療前 (例2)

治療後 (1年2か月後)(例2)

治療例3 上下犬歯の萌出余地不足

年齢:9歳5か月 男子
治療法:上下マウスピース法(Invisalign First)※
検査費用:38,500円
基本費用:550,000円
調整料:3,300~6,600円
治療期間:1年5か月
通院間隔:通常2か月に1回
注意事項:食事と歯磨き以外、1日20~22時間の装着が必要です。協力が得られない場合には完治しないことがあります。

治療前 (例3)

治療後 (1年5か月後) (例3)

小学生で矯正治療を行う際の心配なことQ and A

Q-1 まだ大人の歯に生え揃っていないのに矯正をする意味があるの?

A-1
小学生矯正治療は前歯をキレイにすることだけが目的ではありません。成長期のうちに咬み合わせを整えておくことは発音、咬む力、呼吸やアゴの成長など心身共に健やかな成長の手助けとなります。大人の歯になってから行う矯正治療と意味合いが異なります。

Q-2 アゴの成長段階で矯正をしても後で噛み合わせが変わるのではないか?

A-2
小学生の矯正治療は主に前歯の並びや咬み合わせを治療し、その後の咬み合わせやアゴの成長を観察していくことも含まれています。

Q-3 矯正治療中に乳歯が抜けても大丈夫?

A-3
小学生は歯の交換時期であることから、矯正治療中に乳歯が抜け、永久歯が萌え代わります。その位置に応じて永久歯のコントロールも行います。

Q-4 矯正装置をして虫歯にならないか?

A-4
固定式の矯正装置をお口に入れる場合は、むし歯のことで心配される親御さんが多くいらしゃいました。しかしマウスピース法は取り外し可能な装置のため、装置のない状態で歯みがきが可能ですので、固定式ワイヤー法に比べて大幅にリスクが減少したと言えるでしょう。

Q-5 小学生のうちに矯正をすれば、歯を抜かないでできるの?

A-5
小学生の第1期治療の目的はアゴの成長が旺盛な時期に歯列の拡大や前歯の並びを整えることにより、将来永久歯が良い位置に並ぶための環境を整えておくことにあります。
通常、第1期治療では歯列全体の歯並びを治療する目的ではありませんので、永久歯の抜歯は行いません。

Q-6 小学生のうちに矯正をすれば、大人になっても矯正は必要ないですか?

A-6
小学生の第1期治療の目的は前歯の歯並びを整え、将来永久歯が良い位置に並ぶための環境を整えておくことにあります。
その後のアゴの成長や歯並びの状態を観察し、第2期治療の必要性の有無を判断します。
アゴの成長具合は将来どこまで身長が伸びるのか分からないと同様に個人差があり、予想することは困難です。仕上げとして第2期治療が必要となる場合もあります。

Q-7 学校健診で歯並び・咬み合わせに問題があると指摘されたが?

A-7
学校健診での歯並び・咬合の指摘は主に“将来このままにしておくと心配な歯並び”に対し、判定2としてチェックされます。将来心配な歯並びとは成長とともに上下アゴの発達に関係している場合です。特に関係が深いのは反対咬合(受け口)、出っ歯、開咬(前歯が咬み合わない)、奥歯の横ズレ咬合(交叉咬合)です。これらの歯並びは早期に相談をお勧めします。

6歳頃から前歯が生え変わり始めて、12,13歳頃に奥歯(第2大臼歯)が生え、28本の大人の歯(永久歯)が生えそろいます(親知らずは含みません)。
ではなぜ、歯が生えそろっていない小学生のうちに矯正治療を行うのでしょうか?
現代の子供達は硬いものを余り咬まないことやアレルギー鼻炎による鼻詰まりや扁桃腺肥大などからの影響で歯列は狭く、内側の傾斜している場合が多く見受けられます。
この影響により、出っ歯やデコボコに前歯が生えてきます。きれいな前歯の子供は乳歯の時期にすきっ歯になっているはずです。4,5歳になるとアゴの成長により、歯の隙間が出てきます。ですから適正なあごの成長をしている子供はすきッ歯になるはずです。
小学生の矯正治療(第1期治療)は通常前歯4本づつが生えてくる8,9歳の頃に行います。
これは前歯が重なって生えて、デコボコしている、出っ歯の場合に前歯の歯並びを治すと同時に歯列全体を適正は大きさ、幅に治療することによってそれ以降に生えてくる奥歯が生える場所を作ることも行っていきます。適正な歯列の形(Uの字型)になることによって前歯がきれいに並ぶと同時に、犬歯より後ろの奥歯も適正な位置に生えやすくなることになり、将来28本が良い歯並びになりやい環境にしていくことです。大人の歯が生えそろった時期以降はアゴの成長はありませんから、歯の交換時期に歯列の形を整えておくことが将来の歯並び大きくかかわってくることになります。

※1マウスピース型矯正装置 (インビザライン)は、医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受けていない未承認医薬品です。
※2マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、米国アライン・テクノロジー社の製品であり、インビザライン・ジャパン株式会社を介して入手しています。
※3国内にもマウスピース型矯正装置として医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受けているものは複数存在します。
※4マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、1998年にFDA(米国食品医薬品局)により医療機器として承認を受けております。
※5マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、完成物薬機法対象外の歯科矯正装置であり、承認薬品を対象とする医薬品副作用被害救済制度の対象外となることがあります。

矯正全般に関して

※1矯正歯科治療は公的医療保険の適応外の自費(自由)診療となります。
※2
A:成人矯正の場合、抜歯を伴う場合は約2年6か月で通院回数は約30回、抜歯を伴わない場合は2年前後で約20~24回です。
B:小児矯正の場合、
矯正治療をスタートするタイミングとその後の永久歯との交換の早さによって前後します。
平均すると1年6か月~2年程度で、通院回数は約10~24回です。
C:部分矯正の場合、0.5~1.5年程度で通院回数は約5~15回です。
尚、通院期間、回数は個人差や治療方法により異なることをご了承下さい。

※3一般的なリスクと副作用

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
①最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2週間で慣れることが多いです。
②歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
⑤歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
⑥ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
⑩様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
⑪歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
⑫矯正装置を誤飲する可能性があります。
⑬装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
⑮装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
⑯あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
⑰治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
⑱矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。