「日本矯正歯科学会臨床指導医」(矯正歯科を専門に行う歯科医師)のマウスピース型カスタムメイド矯正装置※の考察

マウスピース型カスタムメイド矯正装置※は、魔法の装置ではありません

「マウスピース型カスタムメイド矯正装置※」について
※インビザライン:完成物薬機法対象外の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済措置の対象外になることがあります
以下、「マウスピース型カスタムメイド矯正装置」は「マウスピース矯正」と置き換えて表記します。

マウスピース矯正を取り入れて、5年経ちました。(参照:2020年6月のブログ
当初はマウスピース矯正の特徴が分からず、紆余曲折もありました。
今まで、マウスピース法とワイヤー矯正は全く別物と考えていました。
マウスピース法で最初から最後まで全て行うものだと思っていました。
ですから適応症例も範囲が狭く、マウスピースでは出来ない場合も多く、また治療期間も長引いてしまう患者さんもいらして、申し訳なく思うところもあります。
しかし、年齢?と共に柔らかく考えられるようになりました。(笑)

しかし、矯正歯科を専門に行う歯科医師には「こうしたらうまくいくかもしれない」ということが見つけられる「知識」と「経験値」があります。
その経験値からはじき出したのが、下記の内容です。

1臨床指導医だから出来るワイヤー+マウスピース(+矯正用ゴム)も用いたハイブリッド治療
2八重歯、受け口、出っ歯も子供にも対応
3「よくなる」のは歯並びだけでなく噛み合わせも

実際にどう変わってきたか?をプチインタビュー形式でご紹介します。

A子さん:八重歯の矯正を、裏側からのホールディングアーチ(裏側からのワイヤー)を併用して

治療前

矢

治療途中(6か月後)

ホールディングアーチで犬歯のみ移動中

年齢:24歳
主訴:前歯のデコボコ
診断:上下アゴの前歯部叢生
期間:約2年(治療途中)
検査料:45,000円+消費税
基本矯正治療費:1,000,000円+消費税
調整・管理料:3,000円 あるいは 6,000円+消費税
事前に知ってもらいたい事:ホールディングアーチも併用した症例です。
マウスピースの前に、上下アゴ第1小臼歯抜歯後、側方のみワイヤーにより、犬歯の移動
マウスピースは取り外し可能な装置ですので、指示された時間の装着が必要です。

【プチインタビュー】

マウスピース矯正とワイヤー(ワイヤーを用いた一般的な矯正)って同時に入れられるんですか?

入れられる場合もあるし、ダメな場合もあります。
例えば下だけマウスピース矯正にして、上の歯を最初はワイヤーで、後はマウスピース矯正というやり方も出来ます。

マウスピース矯正とワイヤー、それぞれ「得意分野」が違うんです。
症例の範囲が限られてマウスピース矯正だけでは難しい症例があります。

どんな症例が出来ないんですか?

出っ歯さん、シビアなガタガタさんは、マウスピース矯正だけでは、治りません。
一方、ワイヤーなら何でも出来るんです。
マウスピース矯正も使って、なおかつ横だけワイヤーを使ってやればいい、つまり「目立たない矯正」をご希望の患者さん(裏側矯正)でやりたかった患者さんのニーズに応えられるな!と気が付いたのです。
マウスピース矯正は、研修会やオンラインで知識を積み上げていくんです。
「あ、こういうやり方があるんだ!」と分かるんですね。

知識の共有ができるんですね!それはそうと、上と下と別のやり方、つまり「マウスピース矯正」と「ワイヤー」、同時に治療できるんですね?

はい、出来るんです。

ちなみにこの症例の八重歯の場合、八重歯ではなく、その次の歯を抜かないとできません。
(犬歯が八重歯でも基本的に犬歯は最も根っこが長いため、抜きません。他の歯を抜きます。)
抜かないと上アゴに歯が入りきらなくて、出っ歯さんになっちゃいます。
八重歯を下ろしてくる際に、奥歯が動かなうように歯の裏側に装置を付けます。
簡易的な「舌側(ぜっそく:裏側からの)矯正」のようなイメージでしょうか。
最初からマウスピース矯正でやったら、とても時間が掛かる上に隙間があることでアライナーがたわんでしまいます。

なるほど!力学と脳内3Dで「歯をどう並べていくか?」のデザイン力ですね!

歯を抜いた部分は当初1cm程、歯が無いため、マウスピースがたわんでしまい、変形してしまいます。
そのため、前歯は内側に倒れる、奥歯は前側に倒れる、という反作用が出てしまいます。
歯は動かない、奥歯は噛めない、という状況に陥ります。
そのことを避けるために、ワイヤーで隙間をなくして「抜かない矯正」を同じ流れ、つまり「難しくない矯正」にするんです。
マウスピース矯正は、まっすぐな平面だからこそ動くんです。
(ワイヤーで)歯を隙間なく並べるのに半年、そのあと歯を並べるのに2年掛からないと思います。
今まだ現在進行形です。

今までマウスピース矯正で出来なかった難しい症例が、ワイヤーをプラスオンする事で出来るようになったのですか?

はい。
マウスピース矯正も魔法の装置ではないんです。
マウスピース矯正だけで矯正を最初から完結しようと思うのではなく、まずマウスピース矯正で出来るところまでワイヤーで歯並びを持っていってからマウスピースに変更すれば矯正をすると、安全に、かつスピーディーに矯正治療が出来ます。
これが私の取り入れている、効率的な治療法です。
今まだ現在進行形です。

この装置は先生が作るんですか?名前はあるのですか?

はい、私が作ります、この装置の名前は「ホールディングアーチ」っていいます。
私、こういうの作るの大好き!
歯型を取って、作っていきます。
(将来は歯型を取らなくてもスキャナー+3Dプリンターで模型ができるようになります。)
これを使うと、約半年で動きます。
小臼歯を抜く矯正は、マウスピース矯正だけではとても難しい?できない?と今の私は思っています。
将来はできるようになるかもしれません?!

小臼歯って、どこでしたっけ?

前から4番目、犬歯の奥の歯です。
小臼歯を抜いて空いたスペースに、まず八重歯を裏側のホールディングアーチを使っておろしてきて、治します。
今まで、マウスピース矯正で全ての歯並びの種類の内2~3割しかできなかったのが、半分から6割出来るようになりました。

進化してきているんですね!

だから、このページ作ろうと思ったんです。(笑)
こういうことを広めたいと思うんです。

Bさん:出っ歯、噛み合わせが深い→小臼歯を抜歯、矯正用ゴムを使って開いた隙間を閉ざす

年齢:21歳
主訴:出っ歯
診断:上顎前歯の前方への突出および過蓋咬合
期間:約2年
検査料:45,000円+消費税
基本矯正治療費:1,000,000円+消費税
調整・管理料:3,000円 あるいは 6,000円+消費税
事前に知ってもらいたい事:上の小臼歯抜歯後、マウスピースの前に側方にワイヤー装着を併用した症例です。
マウスピースは取り外し可能な装置ですので、指示された時間の装着が必要です。

治療前

矢

治療途中、透明ゴムにより犬歯のみ移動中

この方の主訴は「噛み合わせが深い」という事だそうですが。

上の小臼歯を2本だけ抜く、ワイヤーで治療すれば比較的簡単な症例なんです。
でも、マウスピース矯正には向いていない症例です。
抜かないと出来ない症例ですので、マウスピース矯正だけだととても時間が掛かります。
というか不可能です。
そもそも噛み合わせが深いですから、マウスピースだけだともっと深くなっちゃう、逆に噛み合わせをひどくしちゃうんです。
マウスピース矯正は、歯の大きな隙間を閉じることが得意ではありません。
(ポイント:マウスピース矯正は、大きな隙間に弱い!)
マウスピース矯正だけでやると、奥歯で噛めなくなる可能性がある症例です。
前歯の歯並びだけキレイになる矯正じゃダメなんです。

この人は横の部分のみに外側から装置を付けてやっていて、隙間が閉じてきます。

デザインですね。パズルみたいですね。

上がズレてしっかり噛む、これでいいんです、噛んでいます。

Cさん:デコボコで出っ歯→プラスチックバー+矯正用ゴムも併用して治療

治療前:奥歯の咬み合わせが不完全

矢

治療6か月後:奥歯咬み合わせ改善

年齢:35歳
主訴:デコボコと出っ歯を治したい
診断:上アゴ前歯の突出、叢生
期間:約1年半~2年(治療途中)、歯を抜かない治療
検査料:45,000円+消費税
基本矯正治療費:1,000,000円+消費税
調整・管理料:3,000円 あるいは 6,000円+消費税
事前に知ってもらいたい事:
歯は抜きませんが、マウスピースの前に奥歯の噛み合わせをプラスチックバー+ゴムにより整える必要があります。
マウスピースは取り外し可能な装置ですので、指示された時間の装着が必要です。

プラスチックバー+ゴム装着により、咬み合わせの改善
下:マウスピース法により治療中

出っ歯が主訴なんですか?

はい、でも前歯を治す前に奥歯の噛み合わせを治してから矯正しましょう、ということになりました。
奥歯の噛み合わせが、本当は下の歯と互い違いにかみ合っていないといけないんです。
このままマウスピース矯正でやると、出っ歯になっちゃうんですよ。
これ(奥歯)をまず後ろにゴムの力によって持ってくるんですよ、歯を抜かないんですよ。
そのためには、いっしょくたに後ろに引っ張るんですよ。

あ、本当に物理的に引っ張っていますね。

治療前

矢

治療途中 6か月後
下前歯はマウスピースで並んできました

下前歯はマウスピースで並んできました

11月から6月の半年強の期間なんですけれど、デコボコが弱くなっていますよね。
スペース作っています。
横から見ても出っ歯さんでなはない、だから歯を抜かなくても出来ました。
出っ歯だという事は、歯がアゴに収まりきっていないという事でもあるんです。

ドクターかみやすの「感想」

以前は、矯正歯科というと患者さんはお子さんばかりでした。
しかし、マウスピース矯正を始めたことで20代30代以上の方も増えました。
一番見た目に気を遣うタイミングの人が、ホームページを見て来て下さっています。
人生100年と考えれば、大人になってからの矯正は、決して遅くないのです。

お子さんのマウスピース矯正

今度はお子さんの症例です。

はい、9歳のお子さんなのですが、何を治したいかというと、犬歯が生える隙間がないんですね。
子供の矯正(主に6~9歳頃)も去年からマウスピース法により治療できるようになりました。

Dさん:永久歯の犬歯が生える隙間がない!

治療前(犬歯の生える隙間が不足している)

矢

治療10か月後(犬歯が所定の場所に生えてきました)

年齢:9歳
主訴:永久歯の犬歯が生える隙間がない
診断:上下アゴの犬歯の萌出余地が不足
期間:1年6カ月(治療途中)
検査料:35,000円+消費税
基本矯正治療費:500,000円+消費税
調整・管理料:3,000円 あるいは 6,000円+消費税
事前に知ってもらいたい事:
1日のうち、食事と歯磨きの時以外はマウスピース装着が必要。
マウスピースは取り外し可能な装置ですので、指示された時間の装着が必要です。

犬歯(八重歯)が生える隙間がないという事ですが。

1、2番(前歯4本)があって3番(犬歯)がなくて4番(犬歯の奥の臼歯)がある。
乳歯の犬歯は早く抜けちゃって、埋まっているんですね。
年齢的には9歳だからまだ埋まっているんだけど、11歳くらいになると出てきますが、このままだと生える場所がないから八重歯になります、ほとんどは外側に生えます。
大人の矯正だと「4番(犬歯の奥の小臼歯)を抜きましょう」となります。
犬歯は抜けないのです。
4番を抜いて矯正をしなくてはなりません。

そういうこと、素人にはわからないですね。何はともあれ、八重歯の生えてくる場所がないことに、早く気が付いてよかったですね。

そうですね。
「あれ?これで大丈夫?」って気づいてもらう事も大事なのです。

お子さんのマウスピース矯正を使った矯正をする際、母親として心配なのは「取り外しができる装置だと、子供がやってくれないんじゃないか?」ということです。高額な治療費を払って結局矯正が出来ないとなることが心配です。

この年代(8~10歳)のお子さんは、親が「やろう!」と言えば比較的やってくれます。
中学生になったら親の言うことは聞かないことが多いですね・・・。

これがワイヤーだったら横に拡大するのに1年、それから前歯のデコボコさんを治しましょうということになりますが、マウスピース矯正だといろんなことがいっぺんに出来ちゃうんです。
実は、世のお母さんと同じように子供のマウスピース矯正をやる前は「どうせやってくれないだろう」と思っていました。
ちゃんと装置を入れてくれないんじゃないか、親の言うことは聞かないだろうと思っていたのですが、でもやってみたら見た目の効果が分かるのでお子さんも協力してくれるんですね。
子供の矯正の何がいいかって、動きが早いんです、アゴの骨がまだ柔らかいから。

それを聞くとちょっと安心できます。

よかったです!

Eさん:受け口の治療、マウスピースに矯正用ゴム付けて

治療前

矢

治療6か月

年齢:9歳8か月
主訴:受け口を治したい
診断:前歯部の反対咬合
期間:1年6カ月(治療途中)
検査料:35,000円+消費税
基本矯正治療費:500,000円+消費税
調整・管理料:3,000円 あるいは 6,000円+消費税
事前に知ってもらいたい事:矯正用ゴムを併用した症例です。
マウスピースは取り外し可能な装置ですので、指示された時間の装着が必要です。

マウスピース矯正って、受け口は難しいと聞いたことがあるのですが。

マウスピース+ゴム

確かにマウスピース矯正だけでは難しいです。
しかし、矯正用のゴムを併用することで、出来ます。
「ゴムをしてください」という指令は、コンピュータの技師からは全くないです。
ゴムが必要かは、ドクターが判断します。
歯の矯正について学んできているから分かる事ですが、当然受け口なんだから矯正用ゴムをしないと治らないんです。
コンピューター上のシミュレーションでは治るとでるけど、経験値的には矯正用ゴムが必要だと判断します。
ちなみに、矯正用ゴムを使わないと「ちょっと(噛み合わせが)浅くなったかな」くらいが限界だと思います。
1年1カ月でアーチは確実に広くなっています、スペースができています。
子供のマウスピース矯正は、早くてやりがいがいあります。
「点」でなく「面」で矯正が進められるからです。

お子さんがマウスピース矯正を使って矯正する時、適しているタイミングってあるんですか?

前歯が4本生え変わっている、6歳臼歯が生えていることが条件ですね。
年齢でいうと、3年生(8,9歳)くらいでしょうか?
お子さんが親の言う事を聞いてくれて、歯並びの状態も適しているタイミングでもあります。

学校で給食を食べるときにマウスピース矯正を取り外すって、どうなんでしょうか?

実は、アメリカの先生は「つけたまま給食を食べていいよ」というのです。
学校でマウスピース矯正の装置を外すと変に思われるかもしれないと心配すると思いますが、むしろ「最先端」と自慢していいと思いますよ。(笑)
今は、学校の歯科検診で3年でもクラスに2~3人くらいワイヤー(の矯正)をしている子がいるので、あまりからかわれなくなっていると思います。
ワイヤーの矯正は、子供たちに受け入れられています。
それと、親にとってもワイヤーでの矯正は虫歯になるリスクがありますが、歯磨きするときは取り外しができるから、それもメリットですよね。

マウスピース矯正は「魔法の装置」ではありません

ご覧いただいたように当院でのマウスピース矯正は、経験して積み重ねてきた矯正治療の知識を総動員して、コンピュータがはじき出してくる設計図にプラスオンしていきます。
「コンピュータ上だけでは限界がある」ココを知ることが大事なのです。
その上でどうしたらいいのか?を考え、実践します。
その「経験値」があるのが、矯正臨床指導医の強みです。

「矯正用ゴムを使ったどうだろう?」「ワイヤーも併用したらどうだろう?」と試行錯誤して生まれた方法が、当院の「ハイブリッド矯正」なのです。
ハイブリッドだから期間が短縮出来るのです。
ハイブリッドだからこそ出来る「いいこと」がイッパイあるのです。
例えば、マウスピース矯正だけだと3年掛かっていたことが、2年で終わったりするのです。
(矯正治療は早く終わるに越したことはないですよね)

逆を言うと、知識がないとイハイブリッドは出来ないんです。

1994年に日本矯正歯科学会の認定医を取得して、はや四半世紀が経ちました。
ワイヤーの矯正をすることで、いろいろな事を学びました。
「あれを使おう」「これを使おう」という引き出しがあるからこそ出来る事があります。
四半世紀という年月を考えれば、ワイヤー以外の方法が出てきて、矯正治療の方法も変わってきてある意味当然ともいえるでしょう。

ちなみに、マウスピース矯正治療の際、ワイヤーでの治療を追加しても費用は「オールインクルーシブ」です。
ワイヤーや矯正用ゴムを併用する「ハイブリッド代」が含まれます。
是非お気軽に一度ご相談ください。

編集後記

かみやす先生の話は、出っ歯さん、デコボコさんと、愛情あふれる言葉で表現されています。
新しい矯正の方法、(マウスピース矯正)を取り入れて、違うアプローチで問題を何とか解決しようとする熱意に毎回感服いたします。
そして矯正一筋(歯周病の知識も持っていますが)四半世紀の先生でないとできないマウスピース矯正があります。
知識力や経験値が豊富です。
困った事、分からない事、ぜひ相談してみてください。

(インタビュー:2020/7/27)